幸福の資本論の感想
こんにちは
アナキンアウトレイジでござる。
今回は趣を変えて書評ブログを書く。
その本は幸福の資本論。
2017年の夏頃に出版された本であり、著者は橘玲さん。
なぜか私がフォローしている方々にファンが多い印象がある。
私はそこまで熱烈なファンというわけではないが、みんながあまりにも推薦しているので、ついつい本を手にとってしまった。(周りに影響されやすいタイプ笑)
ずっと本棚で積ん読状態になっていたのだが、最近ふと読んでみて、それなりに新しい発見があったので、このたび書評をまとめてみようかと一念発起し、筆を取る次第。
今回はみんな知っている本の書評だけど、今後はあまり世間で注目されていないけど、ためになった本を紹介していきたい。
この本では、いかに幸福になるかを3つの資本から論じている。
3つの資本とは金融資本、人的資本、社会資本。
ここでいう資本とは、富及び幸福を生み出す源泉と理解していれば差し支えはない。
金融資本は理解しやすい。
金融資産が生み出す富の源泉、お金やら有価証券やら今なら仮想通貨とか不動産とかである。お金がお金を生み出す世界の話。
この本でも金融資本についての解説はあるが、著者の別の本を読むほうが有用であろう。
幸福の資本論でも、そこまで説明に力を入れていない。
人的資本は自分の労働力である。
人的資本から富を生み出すことは自身の労働力を労働市場に投入して富を得ることであり、人的資本とは文字通り自分自身のことである。
単純に言えば、バイトやサラリーマンで給料をもらうこと指している。
そして、お金だけではなく労働から生まれる幸福についても論じている。
社会資本とは人間関係である。
社会資本から富をどのように生み出すか、というのは近年話題になっている評価経済社会という論点に結びつくところでもあろう。
本書では、富という側面よりも幸福について論じている。
色々な論点が本書には収録されているが、私が特に感銘をうけたのは人的資本についての解説なのでそこのところをメインに解説していきたい。
以下目次
(1)人的資本理論(6章人的資本は「富の源泉」P92)
(2)クリエイティブクラスとマックジョブ(7章)
(3)好きなことに人的資本のすべてを投入する(9章オンリーワンでナンバーワンの戦略P156)
(4)超高齢化社会の唯一の戦略(10章)
(5)おわりに
では本題
(1)人的資本理論
この人的資本理論をご存知でしょうか?
恥ずかしながら、本書を読むまで人的資本理論については知らなかった。
ノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者ゲーリー・ペッカーが提唱した理論で説明は以下の通り。
“ひとはそれぞれ「人的資本(ヒューマンキャピタル)」を持っており、それを労働市場に投資して日々の糧となる収益(給料)を得ているのだと考えました。これは金融資本を金融市場に投資して日々の糧になる収益を得る経済行為と同じですから、「働くこと」を人的資本の投資と回収として経済学の枠組みで説明できます。これが「労働」の意味を大きく書き換えたベッカーのイノベーションです。”(P92)
この人的資本理論の秀逸な点は、労働から生まれる収益の単純な金額合計だけではなく、その割引現在価値から判断しているところにある。
経済や会計や投資の世界には割引現在価値という概念がある。
この概念はマクロ経済とミクロ経済をつなぐ超絶最重要基本概念なので、絶対にマスターして欲しい考え方である。
金利とその他の経済事象を関連付けるもの。
アナキン金融塾を開講する運びになったら最初に解説したい概念である。
このブログで今度解説しようかな。
知らない人はとりあえずググるなり、本で調べるなり、付け焼き刃でなんとかして欲しい。
割引現在価値の理屈を理解していないとこの人的資本理論の理解と、そこから導きだされる結論も、あまりピンとこない恐れがある。
端的に言うと世の中の金利を考慮して、給料の金額を考慮しましょ、ということである。(人的資本理論の本題は教育と給料の関連についての理論であるが、本書ではあくまで給料を金利も加味した金額で判断するために、この理論を使っている)
生涯の給料が3億円の人がいたとする。
この人の給料を金利別に表現した表を見て欲しい。(P95)
この表は3億円の生涯給料を持つ人の人的資本が金利によってどのように変化するのか表している。
金利(割引率) |
人的資本の割引現在価値 |
8% |
5500万円 |
5% |
9200万円 |
4.5% |
1億円 |
3% |
1億4000万円 |
1% |
2億3000万円 |
0% |
3億円 |
金利が上がれば人的資本の割引価値が下がり、金利が下がれば人的資本の割引現在価値という関係にある。
グラフを見ればわかる通り、金利と人的資本の割引現在価値は反比例の関係にある。
今の金利はどの水準にあるかご存知であろう。
この20数年間、金利は下落の一途をたどっている。
2017年11月17日現在、10年物の日本国債利回りが0.02%である。
https://www.bloomberg.co.jp/markets/rates-bonds/government-bonds/japan
低金利状態になると人的資本の価値が上がるのである。
私は、この低金利低成長の時代では労働の価値が上がるだろうと薄々考えていたのであるが、そのうっすらとした思いが本書によって明確になったのである。
要は昔よりも金利だけで暮らすことが難しくなってきているのだ。
30年前なら金利も5%とかそれ以上あったのである。
バカでも、稼ぎを何も考えずに預金すれば金利で食えたのが、無理となった。
まあ、ようは働かないといけない時代になっているということである。
預金の金利で悠々暮らす、ということが不可能な経済状態とも言える。
金利が低すぎて、働かずに生活することは無理なのである。
(ビジネスで成功して、平均よりも大幅に稼げば話は違うけど、ここでは除外する)
我々アラサー世代で、普通に生きていて将来定年退職後に年金と預金の金利だけで生活できると考えている人がいるだろうか?
私は無理だと思っている。(ビジネスで一発当てない限り)
年金金利生活が無理であり、生涯働かないといけないのだろうと考えている。
一発当てない限り、労働することが義務づけられているのである。
それを数字で示しているのがこの人的資本の考えなのである。
労働の価値が高い、というか、労働せざるを得ない、といった方が正しい表現かもしれない。
労働せざるを得ない状況だからこそ、労働の価値比重が相対的に高まっていると言える。
金利が高ければ労働にだけ頼る必要はなくなるので、労働の価値も落ちる。頑張って節約して預金していけば(お金を貯めるまでは労働する必要あり)、何も考えずに金利収入が生まれるのだから。
この話は後半で話す超高齢化社会とも関連することである。
(2)クリエイティブクラスとマックジョブ
ここでは労働を二つに分けて考えております。
マックジョブとは以下の通りです。
“マックジョブはマクドナルドのような定型化(マニュアル化)された仕事で、会社のバックオフィス部門(事務職)のほか、日本の”お家芸”とされたものづくりの現場も含まれます。“(P109)
クリエイティブクラスとは以下の通りです。
“それに対してクリエイティブクラス(シンボリックアナリスト)は、「仕事の価値が時給計算できない仕事」ということになります。しかしそのなかにも、「拡張可能な仕事」と「拡張不可能な仕事」があります。“(P109)
マックジョブはイメージしやすい。バイトや単純な工場労働者や今では事務職のバックオフィス部門も含まれる。いわゆるブルーカラーと呼ばれる仕事。労働の対価は時給換算される世界。
クリエイティブクラスの「拡張可能な仕事」と「拡張不可能な仕事」の違いは説明が必要かな。
本書ないでは舞台役者と映画俳優が例としてあげられている。
舞台役者は現場で仕事をする必要があり、その場所を超えて仕事をすることができない。拡張不可能な仕事である。
しかし、映画俳優となれば、全世界で映画を放映でき、さらにテレビやDVDなどでも稼ぐことが可能となる。場所や時間を超えて稼ぐことができ、拡張可能な仕事と言える。
上記の例で考えたらわかる通り、拡張可能な仕事の方が遥かに収入が高まる可能性がある。
現代の億万長者は拡張可能な仕事をしているクリエイティブクラス、と言える。
収入という点で考えたら拡張可能な仕事を考える必要がある。
この点は私も目下いろいろと計画中である。
(3)好きなことに人的資本のすべてを投入する。(9章オンリーワンでナンバーワンの戦略P156)
これは単純な収入面でも幸福の追求という面でも重要なことである。
最近、私自身も強く意識していることである。
人間は結局好きなことを仕事にするべきなのである。
苦手なことや嫌いなことをやるべきではないのである。
それがたとえ収入面でいい待遇だとしても。
10数年近く社会人として働いてきて、見えてきたものがある。
結局仕事で評価されるやつは、その仕事のことが好きな人。
頭のいいやつでも、能力のあるやつでもない。仕事が好きなやつか、その仕事が得意なやつ、これがドンドン出世しているのを目の当たりにした。
頭のいいやつや能力が高いやつもいたけど、結局は仕事が好きなやつが最終的に勝っていた。
その仕事が好きなやつは、勝手に仕事をするし、ドンドンスキルアップしていくのである。好きだから仕事する→仕事いっぱいするからスキルあがる→高評価→収入アップ、となる。
自分で言うのもあれだが、私はそれなりに能力がありそれなりに仕事の評価を上げていたが、結局は仕事が好きなやつに勝てなかった。
やっぱり好きなことをやっているやつは強いと思った瞬間である。
収入面でも効果があるし、心理面での効果も絶大だろう。
好きなことやっているのだから、ストレスも少ないし、なにより幸福そうなのだ。
これに能力や知力だけで勝負するのは不可能である。
ある程度までは対抗できるが、どこかで限界がくる。
この“好きなことに人的資本のすべてを投入せよ”という主張が幸福の資本論の中で一番共感を覚えた。
私も今後の仕事人生を考えた場合、この好きなことに人的資本を投入する、ということに軸においていこうと考えている。
(4)超高齢化社会の唯一の戦略
超高齢化社会が到来するのは決定的なことだ。
どうあがいても高齢化社会になる。
自分たちアラサー世代の平均余命だって、今後ドンドンと伸びていくだろう。
60歳で定年を迎えて年金生活なんて、できるはずがない笑
上記(1)で述べた通り、大きな富を構築できなかった場合、働き続ける必要が出てくるのである。
働きつづけるか、もしくは大きな富を築いて悠々自適になるか、その2択。
どちらかを選ぶ必要がある。
超高齢化社会になり、蓄積すべき富の金額も上がっている。
70歳で寿命を迎えるのと、100歳で寿命を迎えるのでは必要となるお金も異なる。長寿社会になっていることも、今後の仕事のあり方に影響を及ぼしているのである。
100歳まで食ってくためにどうすべきか、ということを真剣に考える必要がある。
本書では好きなことを仕事にしていくべしと論じているが、私も同意見である。
(5)まとめ
本書を読んで痛感したのは好きなことを仕事にすべき、ということである。
収入面でも幸福面でも好きなことをすべきなんだと実感した。
100歳までの仕事、というものを考えたらなおさらである。
死ぬまで嫌いなことを仕事とするのか?それとも死ぬまで好きなことを仕事にするのか?
両者がどのようなジジイになっているかは、なんとなく騒動できる。
好きなことをやっているやつの方が、幸せであろう。
収入面でも好きなことをやっているやつの方が上になるだろう。
そして、できる限りその仕事の拡張可能性を求めることも必要であろう。
いろいろと考えさせられた本だった。
終わり。